その他の活動

2016.03.10

2月海外視察研修「マレーシア視察研修・経済成長とハラル食品」

開催日時:28年2月18日(木)~2月22日(月)
視察先:ポッカサッポロフード&ビバレッジ㈱マレーシア工場視察
   ジョホール・バル市内視察
   クアラルンプール市内視察                    
参加人数:会員7名、事務局1名、OB2名                   
担当委員会:自己啓発委員会

1)市場の開放

” TPP加盟はマレーシアに幾つかのネガティブな影響を及ぼす、と分析した。例えば、ブミプトラ企業や国営企業(SOE)に対する優遇策などの取り扱いに一定の制限が及び、政府調達では、特定の調達基準額を上回る場合に非ブミプトラ企業を交えた競争受注になる点がブミプトラ企業にはデメリットとした。
2016年02月03日通商弘報(JETRO)より ”

 ブミプトラとは、マレー系先住民族の総称である。

 マレーシアに入り、確かに多民族国家、多宗教国家の間隔とその難しさを感じる事はあるが、ブミプトラ優遇策を感じる事はあまりなかった。
英語が通じない事が多く、中華系レストランで中国語が通用しない。「多民族国家=国際的」と考えていたが、言語障壁はかえって国際化への難しさを感じた。

 視察先企業に於いても、管理職になるとマレー系が少なく中華系人材が多くなり、ホテルや旅行会社に於いても中華系の人材とインド系の人材が多くなる。
また、所得に関しても格差がある。現在の最低賃金は900リンギ/月であり(2016年7月に1000リンギ/月に引きあげ)日系企業に於いてもワーカーは同程度の賃金である。一方で、中華系が占めるマネージャークラスは2000~5000リンギ/月となる。
*10,000円で350リンギ

 一方で、スーパーマーケットを覗くと、ハラル食品と非ハラル食品の区分はあるが、日本のスーパーマーケットの商品と大きな差はない。ナショナル企業の商品が多く、ブミプトラ優遇企業の存在をあまり感じられない。現地ガイドに、ブミプトラ優遇策を質問しても、質問の意図が明確に伝わっていない事から、現地に於いてもブミプトラ優遇策をあまり意識していない様に思える。

 エネルギー、資源、産業インフラなどが国営企業の事業領域であり、当該分野でブミプトラ優遇があるのかもしれないが、民間市場は開放がなされていると感じる。

 感覚としては、経済の二重制度である。

 TPP加盟後も、全国営企業に於いて「ブミプトラ、中小企業、サバ州・サラワク終企業振興政策のため、これらの企業からの40%までの優先的購入権付与」が保留規定として存在するため、今後も二重制度が続くと思われる。

非ハラルの豚肉品売り場

非ハラルの豚肉品売り場

非ハラルのアルコール品売り場

非ハラルのアルコール品売り場

 上記2コーナー以外は、ハラル対応食品売り場となる。

2)多民族・多宗教国の駐在員

 ポッカマレーシア工場の林工場長には、一部私的な事への質問をさせていただき、それに対して丁寧にお答えいただき感謝している。

 多民族国家のイメージとして、中国の様に、宗教の影響が少なく、漢民族の様にマジョリティがいる国のイメージであったが、多宗教が介在すると多民族の感覚が異なってくる。

 お互い最低限のラインだけ決めて、他の事については、多くがファジーな感じがした。企業においても、国家においても、経済においても最低限のラインが存在するように思え、それ以外はファジーになっているように思える。お互いの宗教と民族を尊重する為には、ファジーな部分が多く必要になるのかもしれない。

 考えるとこれに慣れる事ができる日本人は限られているのかもしれない。日本人であることに誇りを感じ、日本を押し付けない、相手を尊重する。簡単に見えて難しく感じた。

3)経営戦略の重要性

 中小企業が多い我々に欠ける重要な事が経営戦略であると考える。

 サッポロとポッカが一緒になった根本的な事まで聴くわけにもいかず、下記推測を交えて所感を記載する。

pokka

 ポッカが東南アジアに工場を持っているという事よりも、シンガポールの市場ならびにイスラム圏の市場を持っている事が、M&A上重要な事項であったと考える。現在もマレーシア・シンガポールに於いて「POKKA」の商標を使用している事を考えると、日本におけるポッカのブランドイメージより、ポッカのブランド力はあったと推測する。

 また、ビバレッジ(飲料業)ではなく、フード&ビバレッジを社名に使っている事から、経営戦略上に、食品全体の業務への展開を考えているものと推測する。

 社名が示す様に、今後もビバレッジから食品全体への事業領域の拡大、M&A、多角化を図ると考える。

4)エリア戦略

エリア戦略

 アジア地域の戦略とハラルハブの戦略の2つの側面で戦略展開を実施している。数年前の国際化の戦略は、国対国の戦略であったが、TPPで示されるように、国をまたがった広い地域戦略で考えて行かなければならない。また、宗教の面でも考える必要があり、本視察は今後の意識改革のうえでの分岐点であったと考える。

5)地域戦略と国際戦略と企業戦略

地域戦略と国際戦略と企業戦略

 ジョホールバルがシンガポールを利用し成長戦略を展開しているから、日本企業の投資がある。この地域の国際戦略が無い限り、企業戦略の地域への展開が今後難しくなっているように感じた。地域の成長のためには、地域の国際戦略の明確化が当長岡市においても必要になっているのかもしれない。長岡が、国際的にどうあるから、どのように企業を誘致するか。あるいは、長岡企業に国際的にどのようなってほしいのか。今後の政治(行政)と経済のあり方が重要であると考える。

記事作成者:自己啓発委員会 中村 公哉